母親と赤ちゃんの手の写真

胎児に起きた病気

今年1歳になった私の子供には、本当なら兄がいるはずでした。

検診に出向いたある日、エコーで映し出された子供の腹部に3㎝ほどの丸い影が・・・
主治医に紹介状を持たされ、その日のうちに医師会へ行かされました。

最初の子供の病名は「後部尿道弁閉鎖(下部尿路閉塞)
 

診断と説明をしてくれた先生によると、1000人に1人の確率で起こる病気だそうです。(例えば流産・死産した場合や中絶した場合などにもこの症状が起きているかもしれないことを考えると、発症数はもっと多いかもということでしたが)

この病気は尿路の一部で形成不全(おちんちんの弁や尿道が閉じてしまう)が起こり尿を排せつできず、羊水が減り、逆流した尿が膀胱、さらには腎臓に溜まってしまうというもので、羊水が減ることで胎児は圧迫され、呼吸がうまくできずに肺低形成が起こり、そして逆流して尿が溜まってしまった腎臓は、悪化すれば腎不全を起こします。

この時、私たち夫婦に出された選択肢は3つ。

『 お腹の子供を諦める 』か、
『 一縷の望みをかけてこのまま妊娠を続ける 』か、
『 一縷の望みをかけて東京や神奈川などの病院まで(自宅は九州)『胎児膀胱羊水腔シャント術』を受けに行く 』か。
(地元周辺では腎臓が無事かどうか検査することすらできなかった)

先生が言うには、エコーで見る限りかなりの量の尿が腎臓に逆流してしまっているとのこと。この時妊娠20週目で中期中絶は22週目からはできません。

妊娠を続けるにしても生まれる前に呼吸ができなくなって死産になってしまうだろう、もし奇跡的に生まれたとしても、生まれた瞬間から呼吸器をつけ、透析をしないと生きられないうえ、長くはもたないだろうと。

じゃぁ3つ目はと藁にもすがる思いで先生に聞きましたが、このシャント術は症例、成功例共に少なく(生存率47%、内40%は腎不全)、「それでもどうしてもと言うのなら病院の紹介はするけど」と申し訳なさそうに言われました。

発見が早ければもっとやれることがあっただろうかと当時は悩みました。1か月前には何もなかったのに、と。
ですが、こればかりは予測できません。”あるかもしれない”では、母体が元気ならなおさら、4週に1度しか受診はしません。

私達夫婦は、子供を諦める選択をしました。
このまま妊娠を続けても、あるいは手術をしたとしても、子供が辛く苦しい思いをするだけだと考えたからです。

胎児の病気もたくさんあります。

直面した家族それぞれの選択はその家族それぞれの考え方や事情があってのことで、どれも間違いではありません。というより、他人が間違いだなんて言えることではないのです。

もし何かあったとき、どんな選択をするにしても、できるだけ悔いの残らないようご家族で話し合ってください。

先生に最後に言われた言葉が今でも心に残ります。

「300人に1人の胎児が亡くなる。
////無事に、しかも何の異常もなく生まれてくるだけで奇跡」

 


参照
日本胎児治療グループ:https://fetusjapan.jp/method/method-107

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